2007年5月
ウシュアイアには『ナナメの木』と 呼ばれる木がある。
文字通り、 木自体が斜めになってるのであるがその理由が『そういう種類の木』だからではなくて
なんとパタゴニアの風が強すぎる為木が少しづつ倒れてしまって斜めになってしまったと言うんだから恐ろしい。
さらにその周辺の海岸でムール貝が取り放題だというので面白いと思って取りに行くことにした。
どちらかといえば私は後者の方が興味がある( 笑)
それはさておき .市内から75キロほど離れた所に有るというので距離的には大した事はない。
が、何かメチャクチャ雲行きが怪しい。
イヤな予感がする・・・。
はじめは良かったが斜めの木に行くダートに入った途端いきなり大雨が降りだしてきた。
しかもこん な時に限って土のダート・・・ついてない。
雨男の本領発揮である。
カッパを忘れてしまったのでジーパンはどんどん水が染みこんでくるし、スピードは出せないし、
斜めの木までの35キロがとてつもなく長く感じたのは言うまでもない。
1時間位で何とか海岸までは辿り着いたがその時には、既にヘトヘト。もう斜めの木なんかどうでもよくなっていた。
が、ここまで来たのだからと大雨の中写真を撮りあまりの寒さの為、さっさと引き返す。
もはや、何しに来たのか訳が分からないが,そんなこと気にしてる場合ではなかった。
しかし、そんな状況下であるにもかかわらず、 どうしても気になっている事があった。
もちろん、ムール貝だ。
今の私にとって、斜めの木よりはるかに重要であった。
ちょうど雨もやんできたので『ここだ!!』とばかりにエースストライカーのプライドにかけて(誰が 笑)海岸を探しにかかる。
結果からいうと、ムール貝はたくさんあった。
しかし、ムール貝の
『カラ』
しかないのはどういうことだ!!
鳥などに食われたのか、時期違いなのか理由は分からないが、とにかく中身のある貝は皆無にしかった。
しかし、そんな中でも一つだけ発見!!(オレ、がんばった)
見つけたことに喜びつつ、ふと空を見上げて見ると白い粉が宙を舞っているホコリかなと思いつつ顔に当たったら顔冷たい。
...つーか雪じゃん!!
ますます状況が悪化してんじゃねーか。
もはや、貝なんか探している場合ではなく、吹雪の中、来た道をも戻るが、雪が大粒な為目に入って前がよく見えず、思わぬ苦戦。
レミオロメンの『粉雪』でも歌って気を紛らわそうと試みるが、状況はどう考えても粉雪どころではない。
どんどんテンションが落ちてきて、思いの他、逆効果だった…。
選曲を間違えた、、、。
しかし、こんなとこで、コケたりしたら一体誰が助けて、、いや、気づいてくれるだろう。
そう考えたら寂しさより、恐怖心の方が芽生え出してきた。
とにかく、一刻も早くダートを脱出し、ウシュアイアの街まで向かわなければ!!!
その後はホントに無心でダートを走り抜けた。周りになにがあったとか、そんな事はまるで覚えている訳がなかった。
雪がついさっき降り始めということもあって、なんとか滑り込みで事なきを得て6時過ぎに
ウシュアイアの街に帰ってきた時は、ほんとにホンっっっトに!!!!ほっとした。
ドラム缶風呂に入ってようやく心の底から安心できた気がする。
しかし長い一日だった。
がんばったお祝いに、1個だけど取って来たムール貝をゆでて食べようと試みる。
茹で上がった貝を見て驚愕!!
それは、貝の大きさでもなく、味でもなく、磯の香りでもなく、
なんと、
『 中身が入ってなかった事 』
であった....。
しかし、先日は何とか切り抜けられたから良かったが、あの後一体どのくらい積もったのだろうか。
そうでなくても一日一回は、必ず雪が降っている。
そろそろここも旅立たなければ冗談抜きに本当に越冬しかねない。
明日あたり行こう。
そう思っていたらチャリダーのカップルが上野亭を訪れて来た。
この雪の中、よく訪れて来たと思うが実は、オレはウシュアイアに来る途中このカップルに一度会って入るのであるが、
オレがウシュアイアに到着してから8日経っているのでさぞかし大変だったのだろうと思う。
自転車の苦労はバイク以上だ。
彼等は、今日一番気になる道路を通って来たというので、さっそく道路状況を聞いてみる。
すると
『最悪ですよ。道路には5センチくらい雪が積もっていて、アスファルトの地が全く見えません。
もちろんペダルなんかこげないからウシュアイア手前15キロ位まで殆ど押してきましたよ』
ガーン!!
閉じこめられたあ,!!!!
いや、実際通行が厳しいのは標高が高い峠道を走る50キロ程の距離だけなのであるが、
たったそれだけの距離がかなり困難だからタチが悪い。仕方なく次の日 、どのくらい積もったのか確認しに行った。
ウシュアイアから25キロ離れた地点まで見に行ったのであるが、不思議な事に雪の殆どは消えていた。
5センチ積もっていたというのが嘘みたいだ。行きの時に一番雪が深かった所が大丈夫だったので、ほっとして引き返す。
これなら明日何とかなりそう。
そしてそのまま国道の終点、つまりブエノスアイレスからずっと続いていたRUTA3と呼ばれる国道3号線の、
3200キロの道のりがとうとうここで終わるのである。
一度市街に戻ってから30キロ。途中からダートになるのであるが、よく舗装された土で走りやすい。
土は昼間でも完全に凍って入るのであるが凍っていた方が走りやすかったのは意外だった 。1時間かからずに到着する。
朝、チャリダーのカップルも、ここを目指して出発していたが、いいタイミングでここで会う事 ができ、一緒に記念写真を撮る。
それにしても、 ああ、長い年月かけて思い描いてた場所に本当に着いたんだなあ。
それだけが全てだった。
そして、ウシュアイアの最後の夜もあっと言う間に過ぎて行く。
そして次の日の8時半、支度を開始。とうとう出発するかと思うとやっぱり寂しい。
それだけここの宿が良かったという事であろう。皆、出られなくなる理由が良く分かる。
が、出ようとしているのに、思いの他天気が悪い。
地面を見ると、昨晩雪が降った形跡がある。
イヤな予感が・・・。
チャリダーのgoonai君に『このまま越冬しましょう 』
とからかわれるが、 このままでは本当に出るタイミングを決められずに越冬しかねないので皆と写真を取った後出発。
さようならああああ上野亭!!
既に雪は舞っている。山全体にも雪雲が覆っているので、ある程度は覚悟している。
昨日行った25キロ地点までは特に問題なし。
意外に行けるかなと思っていたのであるが、実はそれからが地獄の始まりだった。
道路が少し白くなって来たので、来たーと思って減速。
このくらいは予想範囲内だある。
…が、初めは所どころだったアイスバーンが、いつしか道路の『地』が見えなくなり、終いには
『全アイスバーン』の道を走る事となった。
こうなると、行きの時に味わった、あの苦しみなど 比較にならない。
パラパラ舞っていた雪も 吹雪に変わり、普通に考えてバイクが走れる 状況じゃない所を走るハメになったのである
要するに、一番避けたい 最悪なシュチュエーションになったのだ。
しかし、エスコンデイード湖 という湖までの50キロの峠道まで走り切ってしまえば、
そこから先は何とかなるだろうと思い、比較的滑りにくい路肩を走って何とか走行。
しかし、1キロ進むまでの時間が、気が遠くなる程長い!!
21km/hで走行する のが精一杯だ。
それ以上出せば、後輪がスリップするのでクラッチ操作がマジで疲れる。
しかし、それだけ気を使っても,2度転倒。滑って 一人ではとても起こせないのでその度に、
通りかかる車に手伝って起こしてもらい少しずつ進むが、一番雪の深い所ではタイヤがスリップして全く前に進まない所が何キロも続いた。
本当に気持ちは折れる寸前で、何度もこの近辺で止まろうと思ったが、明日 はさらに厳しくなるだろうと思って、なんとか持ち直す。
でも、このままじゃ、150キロ先の街リオ・グランデにすら辿り着けない。
仕方なく、対抗車を引き止めてこの先の道路状況を聞いて見たら、
『あと20キロくらい進めば、アイスバーンは無くなる。』
という答えだった。
今の自分にとっては果てしない距離である。
が、1時間耐えれば越えられる距離だと自己マインドコントロールで自分に言い聞かし、再び走行開始。
ヘルメットのシールドにも雪が付くので1分毎に振り払うが、息 でシールドの内側が曇るので閉められない上
大きい雪の粒が大量に ヘルメットの中に入って来て顔が冗談抜きに痛い。
雪を拭う為に頻繁に片手を離す為、ほとんど片手運転で正直怖いのであるが、気分転換にレミオロメンの粉・・・(以下略)
近くに町や村は見当たらない。
気持ち的には5分の4 ,遭難気分である 。
が、実際は20キロと言わず10キロチョイで少しずつアイスバーンはなくなって来た。
もしかして山は越えたのか!?
そして、そこから先は80km/hで走行する事が可能となった。
うおっしゃああああー!!!!
心の奥底からの叫びである。
安心していたら、なんと再びある地点から雪が険しくなってきて、また前方が真っ白に・・・。
ま たアイスバーンじゃん!!
正直イヤになった。もう、やってられるかと。自然を相手に逆ギレである。
が、キレたところで雪に埋もれるだ けなので、仕方なしに例の如く車を引きとめ聞いてみたら、また『20キロ先』と言う。
もうここまで来たらなにがなんでも今日越えよう。とことん行く事にした。
この日の雪のバイク走行は無謀以外の何者でもなく、車の運転手にも
『この雪でバイクで行くのかよ?? 』と笑われた。
そりゃそうだろう。オレもそう思う。
しかし、人間極限まで追い込まれるとコツを早く体がインプットするのか、
後半は雪道でもバランスを崩さない限り多少スピードを出してもコケる事はなかった。そう、結局走り切ってしまったのである。
そ してそのまま一気にリオグランデを通り越して先日泊まったチリ、アルデンチン国境まで行ってしまった。
薄暗くなるPM5時30分に何とか到着。280 kmの行程を何とか走行できた。
今日はまた待合室に宿泊だが、ストーブが暖くて良く寝れそう。ちなみに荷物の98%はずぶ濡れであった。
追記
私が通った数日 後、ウシュアイアにいたgoonai君がレンタカーを借りて同じ道を
車で通ったらしいのだが、思いきり滑って車をぶつけフロントのダンパーを大破したらしい。ああ、 恐ろしい。
さて、最南端を無事脱出?したオレが次に目指したのは カラファテというウシュアイアから1000キロほど北にある所でした。
なんでも、とある人からの情報ではトウルーチャ(マス)が沢山釣れるというのである。
カラファテという所は、 周りは山で囲まれていて、正直また雪が不安であるが、もしダメそうなら今度こそ引き返すつもりだ。
そう思って 、朝テントから出たら、なんと、テントが凍っている!!
てか パリパリじゃん!!!
緑色のテントが真っ白!ついでに黄色のバイクも真白である。
一体気温は 何度なんだろうか !?
仕方なく日が高くなるまでテントに入ってお茶を沸かして暖まる。かなり北に来た筈なのに全然油断できない。
今いるリオガジェゴスという街はカラファテから300キロと近く道草食っても辿り着ける距離なのであるが、これは行ってみないと分からない。
はじめの150キロは全然問題なし。が、だんだん標高が高くなり何となく道路の周りが白みを帯びてきている様な・・・。
そのままどんどん先に進むにつれ、
道以外は全部が真っ白に!!
山から丘から もう、何から何までである。
バスから眺めるだけなら『ああ、綺麗』とか言って写真撮って終わりであるが、
バイク乗りにとって雪は単に『恐怖』で しかない。
もうこれで終わりだと思っていたのにまたかいな!!
そのうち路面も所どころアイスバーンが出て来た。
またウシュアイアの二の舞なのか・・・。絶対引き返してやると思った。
もうたくさんだ。
しかし、ふとした瞬間一気に山を下った。
すると、突然、全ての白銀の世界のすべてが、視界から消えたのである。
不思議な光景だった……。
標高が下がったから、と言えば それまでであるがこれは見た者にしか分からない神秘的な境地であった。
そして、山を降り切ったら急に暖かくなった。
そして夕方、無事にカラファテの日本人宿、フジ旅館に到着した。
ここの経営者は前述した日本旅館 と同じであるが オーナーの島藤さんは、今はここカラファテの方に住んでいる。
島藤さんに挨拶と、アルミボックスを長期間置かせてもらったお礼を言い、 夜は釣り話で終始した。
次項、釣り編に突入!!
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年 中南米バイク旅行記 こもえすたすメヒコ追加